太極拳における四正とは

はじめに

太極拳を嗜んでいらっしゃる方なら、四正(しせい)という言葉を一度は聞いたことがあるのではないでしょうか。

四正とは、掤(ぽん)、捋(りぃ)、擠(じー)、按(あん)の四つで表現されています。簡化24式太極拳では、攬雀尾(らんじゃくび、ランチュウエイ)の動作の中で掤、捋、擠、按の説明を受けているかと思います。または、四正推手(しせいすいしゅ)で、個別に用法などの説明を受けた方もいらっしゃるかもしれません。しかしながら、習っては見たものの、それぞれの意味がいまいちわからないという方のために、四正について細かく説明していきます。

四正とは力の方向

太極拳の掤(ポン)の概念』の記事でも簡単に触れていますが、広義の掤の力を使って、上下前後の四つの方向に力を発する際に、それぞれを掤、按、擠、捋と表現します。体内の内圧(広義の掤)の移動により発する力の方向を変えるといってもいいかもしれません。

太極拳では、相手の攻撃をまず上方向に持ち上げ(掤)、自分に当たらないように後ろに流し(捋)崩した後に、相手方向(前方向)に力を発して(擠)推し(打ち)、最後に下方向に潰す(按)という過程で攻防を行うのが基本です。

掤(ぽん)

上方向に力を発することを掤と表現します。多くの套路において、最初に起勢(きせい、チーシー)で、両腕を上に挙げてくる動作があると思いますが(99式では開太極 )、こちらが上方向に力を発する掤の一例です。ただ漫然と腕を上げるのではなく、股関節、膝関節、足首関節がゆるめて体幹部を沈めながらその力を利用して両腕を上げていく身体使いです。風船が膨らむ力そのものも掤ということもありますが、この広義の掤は四正すべてで使用しています。

捋(りぃ)

掤で、相手の力の方向を変えた後、掤で加えた圧を切らずに、左右斜め後ろ方向に相手の力をずらしていくことを捋と表現します。捋は後ろに流していることから、引く動作と勘違いされやすいのですが、自分のいる方向に相手を引き寄せることは、太極拳では行いません。イメージとしては、バランスボールをおしつけて相手をコントロールする感じです。両手でバランスボールを抱えて相手に押し付けた状態で、身体の向きを変えれば、バランスボールからの圧が作用している限り、相手は変えた方向に身体が持っていかれます。この原理を、バランスボールではなく身体の内圧で行うのが捋になります。

擠(じー)

捋で相手の体勢が崩れたところに、相手のいる方向、自分にとっては前方向に力を発することを擠と表現します。相手と接触したままであれば、圧をかけたまま、前進し、接触がない場合は、広義の掤を維持したまま相手に接触にいく、またはデコピンの要領で腕を相手にぶつけるなどの応用があります。前にでる動作はすべからく擠なのですが、代表的な例でいえば、99式太極拳でいうところの打勢(だせい)、簡化24式太極拳の中では、そのまま攬雀尾の擠が挙げられます。

按(あん)

下方向、すなわち地面に相手を圧し潰すような力を発することを按と表現します。例としては、起勢(きせい、チーシー)で両腕を上に挙げた後、股関節付近まで下ろす動作などが挙げられます。攬雀尾の最後に、両手を陽掌(ようしょう)にして打つ双按(そうあん)は、套路によっては按といいながら下というよりは前に打っているように見えるものもありますが、99式などでは上から下へ両手を下ろす際に全身も下に沈んで相手に対し下方向に力を発しています。

代表例

攬雀尾(らんじゃくび)

実のところ、套路の過程のどこにあっても、四正の力は働いていないといけないのですが、簡化24式太極拳では攬雀尾で説明していることが多いので、代表例として挙げておきます。

練功法

四正功(しせいこう)

弊会では、基本功の練功の最初に、四正功を行います。四正は太極拳における基本ですので、最初に練習を行い基礎を積み上げます。時々刻々と形が変化していく中で、常に広義の掤の力を発し続けることが重要です。腕の動きが複雑に見えますが、空中に太極マークを描き続けている動きをコンパクトにしたものが四正功です。四正功によって、掤から捋、捋から擠、擠から按へのそれぞれの変化の過程においても、力が途切れない動作も練り上げます。これがわかってくると、行雲流水(こううんりゅうすい)や相連不断(そうれんふだん)といわれるような、技と技の間に切れ目のない太極拳的な風格が、套路などにもあらわれてきます。

推手

推手の一つである四正推手というものが、ダイレクトに四正を使っているように聞こえますが、単推手などの他の推手にもしっかりと四正は含まれています。ただし、たいていの推手は、按を発する際に、相手の捋で流されてしまうので、結果的に按ができずに継続していくという構成になっています。各種推手において、どの局面で掤、捋、擠、按が発生しているかを意識して練功を行うことで、四正に対する理解が深まります。弊会で学ぶ推手の種類は、こちらの『推手の種類』の記事に挙げてあります。

まとめ

太極拳の基本功である、四正について説明しました。

捋の箇所でバランスボールを例えにしましたが、この例は四正のすべてに当てはめることができます。

四正は、両手とも掤や両手とも按のように、両手を同じ方向に力を発する説明になりますが、套路などでは、片手は掤で片手は按など(例えば白鶴亮翅)、左右で別に力を発する局面のほうが多いです(大きな見方をすれば、すべて同じ一つのことではありますが)。そういった力の方向を左右で変えることは、別途、四隅(しぐう)という考え方になります。

四正がどういうものかはわかったけど、いまいち腑に落ちない、試してみても実感がわかないという方は、是非体験にいらしてください。広義の掤から、丁寧に指導いたします。

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しっかし我ながら老けましたね(笑)。だがその分、腕前は上がっているはず(と思いたいw)。プロフィール写真とか動画とか取り直さないとですねー。

コメント

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