太極拳で前引きと言われないために

以前、体育館で教室をやっていると、某表演系団体さんの会員と思われる方がやってきて、個人練習をされていました。

教室が終わって、さて帰るかと体育館の多目的室を出ようとしたら、その個人練習の方に突然声をかけられ、質問を受けました。

「いつも前引きと言われてしまうのですが、どうすればいいでしょうか。」とのこと。初心者の方が陥りやすい悩みですね。

ただ、その方とは面識がなく、「え、誰?」という気分になりつつも、自分も所属していたときは、よく言われたなと思い出し、なにかの助けになればと、アドバイスをしてさしあげました。

前引きとは、某表演系団体さんがよく使っている表現で、太極拳の套路(とうろ)で前進の際に、着地した前足で体を引っ張って弓歩(きゅうほ、ゴンブー)になることを指しています。

前足というのは胴体よりも進行方向側にある足です。後ろ足は胴体の進行方向の逆側にある足となります。

前引き
前引き

これの不味いところは、前方向にボディを前足の筋力で引っ張る、つまり胴体という重い荷物を片足で引っ張るという大変なことをしていること(大体の場合前足だけで100%ではなく、後ろ足で押すことの混合になっていますが、前足に載りきった際に後ろ足の踵が浮く人もいます)と、前足に体重を載せた状態での移動は、胴体の移動慣性を阻害しやすいことです。

太極拳の足は基本的に前虚後実になります。

どうすればよいかというと、まず足を前に出して着地する(上歩といいます)際に、前足に体重を載せてはいけなくて、着地はしているけど、まだ体重は後ろ足に載せていて、前足をまた床から浮かせることもできる状態にしておきます。胴体が前進していくにしたがって、前足に体重が載っていきますが、後ろ足の床から感じる圧力を減らさないようにします。ただし床を蹴ってはダメです。後ろ足は床に張り付いたまま、胴体が前にでていった分だけ前足に体重が載っていく感じです。

練習する際には、まず前後の足の裏の、圧力の強弱を感じることに意識を向けるとよいです。

ところで、この図に記載してある、胴体が慣性で前進するとは何ぞや?ということは、また別の記事で細かく説明します。