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練功で健康に|腰痛の原因と太極拳による改善効果

はじめに

日常の不調に効果的な、太極拳の練功を紹介していくシリーズです。

太極拳的には他にも細かい要訣がありますが、未経験者にも分かりやすいように、要点を絞っています。

慢性的な腰痛に悩む方にとって、「安全に体を動かしながら症状を和らげたい」という願いは切実です。近年の研究では、太極拳が痛みの軽減や日常動作の改善に寄与する可能性があることが報告されています。特に8〜12週間以上の継続プログラムでは、有意な改善が見られた例もあります。ただし効果には個人差があり、症状が強い場合や急性期には医師の診断を受けることが推奨されます。太極拳はゆったりとした動きの低負荷の運動で、年齢や体力に応じて無理なく始められるのが特徴です。

研究のエビデンス

  • システマティックレビュー(2024年):太極拳は慢性腰痛患者の痛みスコアと身体機能を有意に改善したとする報告が複数ありました。対象者の多くは中高年層で、週2〜3回・1回60分前後のプログラムが用いられています。(PMC(2024))
  • 2019年レビュー:太極拳は筋力、柔軟性、姿勢バランスの向上を通じて腰部への負担軽減に寄与するとされます。ただし研究規模や評価方法にばらつきがあるため、さらなる検証が必要です。(PubMed(2019))
  • 日本の腰痛診療ガイドライン(2019年改訂):慢性腰痛に対する運動療法は強く推奨されており、低負荷で継続しやすい運動として太極拳も選択肢の一つになり得ます。(腰痛診療ガイドライン)

腰痛が起こる原因

腰痛が起こる原因としては、身体に無理のある姿勢で、生活を行ってしまうことです。

猫背

猫背(kyphosis)は、背中が丸くなり、頭部が前に突き出た姿勢不良の総称です。
解剖学的には、胸椎の後弯(カーブ)が過剰になった状態を指し、医療分野では「円背(えんぱい)」や「脊柱後弯症」と呼ばれることもあります。

猫背
猫背

現代では、パソコンやスマホ作業、家事など、目線を斜め下に向けることが多くなっています。そうすると、頭が胴体よりも前にでやすくなり、バランスが悪くなります。頭はそこそこ重くて、体重のおおよそ7%の重量があります。体重50kgの場合、3.5kgの重量となる計算です。だいたい女性用のボーリングの球くらいの重さといえばイメージしやすいでしょうか。頭を前に傾けるということは、約4kgの重量の球が前に転げ落ちようとすることと同様なので、首や肩、背中の筋肉が引っ張られて僧帽筋、脊柱起立筋、腰方形筋といった背中側の筋肉に常時負荷がかかることになり、肩こりや腰痛の原因になりやすいのです。

人体
人体の重量バランス

猫背のリスク

  • 首や肩が前に出ることで、僧帽筋や肩甲挙筋が緊張し、コリや痛みが慢性化。
  • 頭部の重心が前方に移動することで、頸椎の自然な湾曲が失われストレートネックに。
  • 長期的には頸椎椎間板の圧迫 → 頸椎症、神経根症のリスクも。
  • 胸郭(肋骨と胸椎の構造)が圧迫され、肺の拡張が制限される。
  • 胃や腸が圧迫され、便秘や食欲不振などの症状が現れる場合も。
  • 猫背姿勢はうつ傾向、不安、集中力低下とも関連があるとされる研究もあります。

また、こちらの『太極拳と姿勢』という記事で掲載したように、スマホやパソコンを見るために、無意識に頭を前かがみにしていることに対してバランスを取るために骨盤を前に突き出した姿勢で立っている人が増えています。生活習慣として、頭の位置を調整することで、無理のない姿勢に戻していくことが重要です。

反り腰

反り腰(医学用語では「腰椎過前弯(lumbar hyperlordosis)」)は、骨盤が前傾し、腰椎(腰の背骨)が通常より強く湾曲している状態を指します。女性に多い傾向にあり、特にハイヒールを履くと、重心が前に偏り、骨盤が前傾しやすくなります。

反り腰
反り腰

反り腰のリスク

  • 腰椎が過度に湾曲すると、椎間関節に過剰なストレスがかかり、慢性的な腰痛の原因になります。特に立位や歩行時に痛みや疲労感が出やすくなります。
  • 椎間板への圧力分布が不均等になり、将来的に椎間板ヘルニアや変性疾患のリスクが高まります。
  • 骨盤の前傾によって、骨盤底筋群が伸ばされ緩む傾向にあり、尿もれなどの症状を引き起こすことも。

腰痛を改善する練功

腰痛や肩こりは、長時間身体に負荷がかかるような姿勢でいることで、筋肉の緊張が慢性化し、誘発されています。そこで、腰回りのストレッチになる練功を紹介します。

抜筋骨で背面ストレッチ

簡単に言えば前屈です。反り腰気味の人に効果的です。但し、いくつかの要点を守ってください。

悪い例

前屈というと、下図のような姿勢をとる人がいます。

体が固いから手が床まで届かないと言ったりするのですが、この場合、足と胴体の角度が90度程度までしか曲がっていなくて、そこからは、だいたい鳩尾(みぞおち)の背中側を曲げて手を下げようとしています。

これだと、臀筋や腰方形筋など、腰痛の原因となる筋肉の強ばりにはあまり作用しないのです。

良い例

正しい練功としては、以下の内容に注意して腰(実際は体の背面全体) をストレッチします。

  • 仙骨の上部(下図参照)から体を倒していく。背骨の付け根から倒していいきます。
  • 無理に伸ばそうとせず、上半身の重さで伸びるようにする。手が床に付かなくても全然大丈夫です。
  • 膝を曲げない。
  • 踵(かかと)を床から離さない。
  • 肩甲骨の間を拡げるように。
  • 踵(かかと)から指先までが逆Uの字になるようなイメージで。

こうすると、体の背面が骨盤上部からUの字に曲がり、背中、腰回りの筋肉がストレッチされるとともに、普段重力で圧縮されている腰椎を開くことができます。10秒くらいキープしてから体を起こしてください。

デスクワークで疲れた時に、背伸びをする事はよくあると思いますが、背伸びした後に少し椅子から離れて、このようなストレッチをすることで、より体が楽になります。

丹田功(たんでんこう)

※こちらの練功は強度が高めですので、現在腰椎などを痛めている方は控えてください。

もともとは戴氏心意拳(たいししんいけん)という、形意拳の母体となったと考えられる流派の練功です。弊会の太極拳や八卦掌にも効果的な練功なので、取り入れております。

上述の背面ストレッチでは、身体の前面を伸ばすことはしていませんが、こちらは前面背面を交互に伸ばす運動になっています。

  • 足を揃えて立つ。
  • いわゆる臍下丹田(せいかたんでん)を意識する。骨盤の中心に球体があるようなイメージ。球が前後に回転するイメージを持つ。
  • 丹田が後ろ回転していくにしたがって、骨盤を巻き背中を丸めて、背面全体を丸く引っ張る。肩甲骨を開く。膝は曲げる。手は斜め前下に伸ばし、小指が前にくるようにひねる。
  • 丹田が前に回転していくにしたがって、背中全体を反っていき、胸を張り臀部を突き出す。膝は伸ばす。肩甲骨は寄せて腸骨あたりに掌をつける。肩は上がらないように注意する。(太極拳ではやってはいけないと言われる姿勢)
  • 丹田の前後回転を交互に繰り返す。
丹田功
丹田功

丹田功は固まった筋肉のストレッチにもなりますし、体幹のトレーニングにもなります。背中を丸めるときも反るときも、胸椎や腰椎だけを動かすのではなく、背中全体を動かすように意識してください。丹田の回転に、身体全体が巻かれるイメージです。前後回転とも、ゆっくりしたスピードで、背中のカーブの曲がり具合は、丸めるときも反るときも、痛くない程度の強度で行ってください。

道具をつかって改善

練功の動作が難しく感じる方や、効かせたい場所のストレッチがうまくいかないという方には、道具に頼ってみましょう。

肋木(ろくぼく)

市民体育館などの運動施設に設置されているぶらさがるやつです。

肋木

私が利用している体育館でも1箇所、肋木が設置されているところがあり、そこで練習するときには、必ずといっていいくらいぶら下がって腰椎リリースを行っています。

一番上の少し張り出しているバーに掴まって、20〜60秒ほどぶら下がり、重力で体幹部の筋肉や、脊椎、腰椎などの背骨を引き伸ばし、普段かかっている負荷をリリースします。背中やお腹に力を入れずに重力にまかせて縦に伸びるイメージでぶら下がるのがポイントです。自分の身体は意外と重いので、ぶら下がっていられる時間は個人差があります。短い時間しか耐えられない方は、無理せずに、回数を分けて行ってください。

このやり方は、重力によってまっすぐ下に引っ張られるので、前後左右の身体の歪みをリリースすることができるので、お手軽です。

懸垂マシン

一昔前だと、ぶら下がり健康器と言われていたやつですね。筋トレブームもあってか、鍛えるためにご購入された方もいらっしゃるかもしれません。これがあれば、ご家庭でも気軽に腰痛予防や改善ができます。

ぶら下がり方は肋木と同じです。器具と身長の関係で、足が床についてしまう場合は、膝を曲げて、足で身体を支えないようにしてください。背中、腰などを伸ばす分には十分です。高さ調整もできるものもあるので、そちらが便利ですね。

高さ調節機能つきぶら下がり健康器(STEADY)

是非お試しください。

太極拳が腰痛に効くと言われる理由

太極拳の要訣の一つに鬆腰(しょうよう、ソンヤオ)というものがあります。腰を必要以上に緊張させずに柔らかく使うことが要求されます。鬆についてはこちらの『放鬆と脱力は違う』という記事に詳しく書いてありますので、興味のある方はご覧になってください。

太極拳の站椿(たんとう)や套路(とうろ)では、鬆腰の状態をキープし、膝を少し曲げて、高い椅子に腰掛けるように骨盤を巻き上げ(収臀)、普通に立っているときには、S字カーブになっている背骨を真っ直ぐ立てる姿勢となります。余計な筋肉の緊張をなくし、背骨を真っ直ぐにすることで、腰椎への負荷の偏りを均等にします。

太極拳姿勢
太極拳の姿勢

動作は主に骨盤の回転から導き、ウエストを無理に捻る(ひねる)ことはしません。このように無理の少ない姿勢の身体感覚を身につけることで、腰への負担が少ない動作で日常生活を送ることができるようになっていきます。

説明や図解だけでは、なかなかわからないと思われる方、詳しく学んでみたい方は、当会教室で体験できます(石川県金沢市、富山県高岡市)。是非お問い合わせください。

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